今年も3月上旬からスギ花粉の大量飛散が始まりました。今年の花粉の飛散量は例年に較べて多く、当、代官山パークサイドクリニックにも多くの花粉症の患者様がいらっしゃいました。花粉症の症状と言えば、『くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒み』が4大症状ですが、他にも喉の痒みや咳、皮膚の荒れなど多様な症状をきたす事があります。

 今年の花粉症の特徴は、『喉の症状』でした。花粉症で喉がイガイガしたりする事はしばしばありますが、今年は喉風邪を思わせる激しい喉の痛みを訴える花粉症の方がたくさんいらっしゃいました。喉の痛みがひどかった原因としては、花粉の飛散量が多い事も挙げられますが、それだけでは説明がつきません。何か別の要因が関与している可能性が高いと思われます。

 気になる事が一つあります。お隣、中国での話です。ご存じの方も多いとは思いますが、中国では急速な工業化と人口増加、都市化によって、国土の乾燥、砂漠化が進行し、大気汚染も急速に進行しています。その指標の一つとして登場したのが、大気中の(有害)微小粒子状物質であるPM2.5の濃度です。日本の環境基準ではPM2.5の濃度は35 μg/m3以下とされています。北京ではひどい時はPM2.5濃度が500とか900という信じがたい数値になるそうです。PM2.5は非常に小さく軽い粒子であるため、ジェット気流に乗り遠方にも到達します。日本でも熊本市で先日PM2.5の濃度が91 μg/m3と国内最高を記録していますが、その主たる原因の一つとして中国から飛来するPM2.5があると言われています。

 以前より中国から飛来する黄砂がスギ花粉症を悪化させる修飾因子となり得ると言われていますが、PM2.5も同様に花粉症の症状を悪化させる可能性があります。PM2.5は急性には喉や呼吸器の症状を引き起こす事が知られており、通常の花粉症の症状の悪化に加えて、気管支炎や喉の違和感、疼痛を生じる事が予想されます。こらは前述の今年の花粉症の特徴を思い起こさせます。私は2008年のオリンピックの際に北京に行きましたが、滞在中に大気汚染の影響で軽い喘息の症状と刺すような喉の痛みを感じました。私自身も花粉症をもっていますが、今年の花粉症で感じた喉の違和感と痛みは、この時の北京での症状にとても似ていました。

 スギ花粉症の時期が過ぎてもPM2.5の影響は続く事が考えられます。初夏や秋にも種々の花粉がアレルギーを引き起こします。ハウスダスト系にアレルギーを有する人はアレルギー性気管支炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの悪化を招く可能性があります。PM2.5は気道から侵入する事を考えると最も影響が大きいのは気管支喘息を持っている人であるのかもしれません。

 また長期的な体への影響も懸念されます。PM2.5は非常小さな粒子であるため、一度気道から体内に取り込まれると肺胞の奥に長期間存在し、一部は血管内に取り込まれます。PM2.5は長期的には慢性閉塞性肺疾患、脳血管障害、虚血性心疾患などを生じる事が判明しています。中国の精華大学の研究によると2010年の中国の死者の15%にあたる123万人余りがPM2.5などの大気汚染が原因で早死にしたと推計されるとの事です。

※PM2.5の大きさ比較の図
kahunPM25.jpeg

 PM2.5は中国の影響だけではありません。現在我が国では原子力発電所の大幅な稼働率低下に伴い、電力供給の火力発電への依存度が高まっています。火力発電はPM2.5を始めとする大気汚染物質を大気中に放出します。安全なクリーンエネルギーの早期実現を熱望します。

 PM2.5が関与している可能性がある症状に対しては、花粉症にしても気管支喘息にしても慎重に対処する必要があります。喉の違和感や痛みが有る場合に、総合感冒薬や強い消炎鎮痛剤を長期に渡って使用する事は免疫力を低下させたり、体に負担をかけたりしますのでお勧めできません。また、消炎鎮痛剤の多くは皮膚や粘膜の乾燥を招き、逆効果になる事もあります。

 この様な場合に、当、代官山パークサイドクリニックでは、比較的長期間使っても大丈夫な消炎剤や漢方薬を中心に治療を行っています。
 特に漢方薬は、皮膚や粘膜の乾燥を防いだり、免疫力にも良い影響を及ぼすものもありますのでお勧めです。漢方薬は患者様の体質(証)によって、同じ症状や病気に対して異なる薬を処方する事があります。適切な医師の診断に基づいて治療する事が重要です。

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