男性更年期障害の話⑨ 男性ホルモン補充療法について2


LOH症候群の男性ホルモン補充療法についての続き、ホルモン補充療法の目的についてです。

 ホルモン補充療法の第一目的は、LOH症候群に於いて不足している男性ホルモンを投与する事によって体の負担を軽減する事にあります。LOH症候群による身体的、精神的症状を緩和し、成人病は発症のリスクを低下させるのが最も重要な目的です。そのために一定の間隔で男性ホルモンの注射を行います。当クリニックでも使用しているデポ剤の男性ホルモン注射は、注射をするとその後7~10日間は基礎値(自分の現在の男性ホルモン値)より高い血液中の男性ホルモン(フリーテストステロン)値を維持し、その後は徐々に低下し始め、次回の注射の直前には基礎値より低い数値になります。そしてまた注射をするとホルモン値は上昇し、という繰り返しになります。投与間隔は原則、125mgで2~3週毎、250mgでは3~4週毎としています。

 これらは女性更年期障害におけるホルモン補充療法も同様に行われます。女性更年期障害の場合は、ホルモン補充療法で自らが分泌する女性ホルモン値が自律回復する事はありません。例えば、ホルモン補充療法を受けている53歳の女性が、ホルモン補充療法で女性ホルモンを回復して55歳でもう一人出産などとは考えていないでしょうし、それは医師・患者ともに理解のうえで治療を行っています。更年期障害における女性ホルモン補充療法は自覚症状の改善と骨粗鬆症などの疾患の予防のためのみに行われます。

 それに対して男性更年期障害における男性ホルモン補充療法にはもうひとつの目的があります。男性ホルモン値の自律回復、すなわちLOH症候群からの脱却です。

 通常ホルモン補充療法は、いずれの治療でも足りなくなったホルモンを単に補充しているに過ぎず、それだけではホルモン値の自律回復は見込めません。例えば糖尿病の患者が何年インスリン注射を行っても糖尿病が治癒する事はありません。しかし、男性更年期障害における男性ホルモン補充療法では、男性ホルモン値が自律回復する事が少なくないのです。その理由については、私は以下の様に考えます。

 男性ホルモンが低下してLOH症候群になると、身体的ストレスが増加します。また、気力の低下や筋肉量の減少、行動力の低下を生じます。これらの要因が男性ホルモンの分泌量をさらに減少させます。この様にLOH症候群は“男性ホルモンのデフレスパイラル状態”になっているケースが少なくありません。特に50歳以下の若年性LOH症候群の方にはこの傾向が顕著に見られます。デフレスパイラル状態のLOH症候群の場合、男性ホルモン補充療法によってスパイラルが解除されれば男性ホルモン値が自律回復してくる可能性があります。回復のスピードは個人差が大きく、早い人では2ヶ月程度の事もありますが、多くの場合は半年以上かかります。そのため、ホルモン補充療法は1クールを完了する事を原則として行っています。

男性更年期障害については、
当クリニック、LOH症候群・男性更年期外来のページよりご覧ください。