ニキビについて


ニキビとは?

ニキビ(Acne)は、医学用語では尋常性 ざ瘡(じんじょうせいざそう)と言います。

 ニキビは毛穴が分泌される皮脂で閉塞し、その部位に広く皮膚に常在する細菌であるアクネ桿菌(Propionibacterium acnes)の感染により炎症を生じる事によって起こります。アクネ桿菌は、酸素の無い環境下で生育しやすい嫌気性菌のため、皮脂で閉塞した毛穴の中などで生息しやすく、また毛穴から分泌される皮脂を栄養分にして発育するために、脂質の多い食事やチョコレート、スナック菓子の摂取で悪化します。また、テストステロンなどの性ホルモンもニキビの発生、増悪に大きく関与するため、日本人の実に90%以上が思春期にニキビを経験すると言われています。性ホルモン分泌の安定化に伴い20歳代前半までにニキビは沈静化しますが、その後もホルモン分泌の乱れや不規則な生活、精神的ストレスで悪化する場合もあります。

 ニキビをいつか治るだろうと長年放置すると、皮膚組織の変性をきたし『ニキビ跡』となったり、シミの原因になったりします。なかなか治らない難治性ニキビやニキビ跡の治療で悩んでいる人は日本中で300万人いると推定されています。
また以前は、ニキビは病気ではないという認識が患者の側にも医師の側にもあったため、なかなかクリニックや病院などの医療機関を受診して治療をして来なかった経緯があります。そのため、早期に適切な治療を行えずに重症化したニキビに悩んでいる方を多く見かけます。これはとても残念な事と思います。

ニキビの治療

ではニキビの治療はどうすれば良いのでしょうか?

日本皮膚科学会が2008年9月にニキビ治療についてのガイドラインを発表しています。現時点ではこれに沿った治療をして行くのが有効と考えます。以下にガイドラインで推奨されている治療薬を列記します。(あくまでもガイドラインの治療法であり、当、代官山パークサイドクリニックの治療法とは若干異なります。)
抗生剤(外用):ニキビが炎症を起こしている時に局所に外用する。薬剤名:クリンダマイシン(商品名:ダラシンTゲル)、ナジフロキサシン(アクアチムクリーム、アクアチムローション)
抗生剤(内服):外用の抗生剤で効果が不十分な時のみ使用する。薬剤名:ミノサイクリン(商品名:ミノマイシン)、ドキシサイクリン(ビブラマイシン)、ロキシスロマイシン(ルリッド)
レチノイド外用薬:日本で認可されているのは比較的マイルドな効果のアダパレン(商品名:ディフェリンゲル)のみ。ガイドライン上は最も治療効果が高い評価を与えられている。
ケミカルピーリング:外用薬剤を皮膚表面に塗布し、新陳代謝の悪化した角質層を剥がす治療法。ガイドラインでは選択肢のひとつとして挙げられている。使用薬剤名:アルファヒドロキシ酸(AHA)、サリチル酸など
漢方薬:他の治療が無効もしくは実施できない状況では次の漢方薬が推奨される:刑荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯。(黄連解毒湯、温清飲、温経湯、桂枝茯苓丸については強く推奨はしないが投与しても構わない)

当クリニックでは、上記のガイドラインを元にしつつ、身体にやさしい治療を心がけています。顔にニキビが出来て3日後の患者さんを例に、当クリニックでのニキビの具体的な治療を下記に示します。
 先ずは漢方薬を治療の基本とします。漢方薬はニキビの状態、患者さんの体質などによって処方が変わりますので一概に言えませんが、この様なケースでは『清上防風湯』を処方する場合が多いです。また、ニキビが繰り返し出来る人には体質改善の漢方薬を併用してニキビに強い体を目指す事も試みます。
 漢方薬と併用する形で『ディフェリンゲル』の外用をします。ディフェリンゲルは副作用として皮膚乾燥、かゆみ、刺激感などの不快感を感じる方が少数いらっしゃいますが、概ねマイルドで使いやすい外用薬となっています。
 ニキビが炎症を伴っている場合は、『ダラシンゲル』をひどい部分にのみ外用します。抗生剤は、当クリニックでは原則として外用使用のみとしています。内服の抗生剤は原則として使用しません。

 実は抗生物質を内服すればニキビは比較的すぐに良くなります。ニキビが人生でこの1回のみなど限定されたものであれば抗生剤内服に反対する理由はありません。しかし、内服の抗生剤にはいくつかの問題点があります。①肝臓・腎臓などに負担がかかる、②抗生剤の使用により耐性菌(抗生物質の効かない細菌)の発生を促す、などの点です。しかし、私は一番大きな問題点は③抗生剤が全身に効果を及ぼす事で、ニキビの原因のアクネ桿菌と一緒に表皮や粘膜・消化管に常在し体の働きを助けてくれている善良な細菌を殺してしまうという事にあると考えます。ニキビ治療のための抗生剤投与が頻回に行われると皮膚や消化管の善良な細菌が大量に死滅します。その後に新たに細菌が増殖するのですが、新たな細菌は抗生剤投与前に比較してややバランスの悪い状態となって行く事が少なくありません。皮膚や消化管の常在する細菌のバランスがひとたび崩れると元の状態に戻すのは困難です。農薬などで生態系が崩れた自然の森が元の姿に戻るのに大変な手間と時間がかかるのと同じ事です。そのため私は、可能な限り抗生物質の内服は避ける方針でニキビ治療を行っています。
 ニキビが落ち着いたら肌質を改善する目的で、漢方薬を長めに内服したり、ピーリング石鹸などを用いたケミカルピーリングを行います。これによって、ニキビを生じにくい肌質への改善を図って行きます。