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破傷風について(ボランティアに行かれる方へ)

破傷風の話〜東日本大震災の被災地で働く方々へ〜

東日本大震災の被災地での瓦礫の撤去が本格化してきています。自衛隊や警察、消防、地元の方々に加えて全国各地からボランティアの方々も続々と被災地での活動をしています。今後は建設業者の方々も加わったより本格的な復興が行われる事となるでしょう。気の遠くなる様な膨大な作業が続きますが、怪我や体調不良に気をつけて頑張って欲しいものです。
 しかし、その際に気をつけて頂きたい事があります。『破傷風』の感染です。現に被災地で地元の方々やボランティアの方々の間に破傷風の感染が確認され、東北福祉大の船渡教授は作業の際の外傷予防やワクチン接種などの破傷風対策の徹底を呼びかけています。

破傷風とは?〜

 破傷風は土壌中に広く棲息する嫌気性菌である破傷風菌の感染によって起ります。破傷風菌は芽胞という形で手足などの傷口(多くは自分でも気付かない程度の小さな傷口)から体内に侵入。組織中で発芽、増殖し、強力な神経毒(テタノスバスミン)を作りだします。
潜伏期間の3日〜3週間を経て、傷の周辺のこわばりや全身のだるさが出現します。その後、開口障害およびそれに伴う食物の摂取困難、首筋の張り、構語障害による会話困難を生じ、それが高度になると痙笑という顔面筋の拘縮に伴う破傷風独特の笑ったような顔貌を呈します。
さらに症状が進行すると頚部の筋肉や背筋の拘縮を生じるため全身が弓なりの姿勢となります。症状が呼吸筋に及ぶと呼吸が不可能となり死に至る事もあります。

治療は破傷風菌に対する抗生物質を投与する事が行われますが、破傷風菌によって既に産生された神経毒については効果がありません。神経毒の中和には破傷風免疫グロブリンの投与が行われますが、症状の進行が急激な場合は治療効果の出現が間に合わない事もあります。
そのため破傷風は早期診断、早期治療が重要です。特に呼吸障害に対しては、気管切開や人工呼吸器による呼吸管理が必須のためこれらの設備がある大きな病院への搬送が必要です。
これら万全の体制をとっても破傷風を発症した成人のうち15〜60%は死亡するといわれています。現代においても破傷風は注意を要する疾患であると考えます。

対策は!?〜

 では、破傷風に対してはどうすれば良いのでしょうか?

一番効率の良い防御方法は発症自体をワクチンで予防する事です。
大多数の人は、子供の頃にDPTワクチンという形で破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)を投与されているはずです。
そのため、我が国をはじめとする先進各国では小児の破傷風は激減しています。しかしDPTワクチンによる破傷風の獲得免疫は有効期間が10年強であるため、20歳以降では破傷風に対する免疫力がほとんど消失しています。
そのため、20歳以降の人には再度破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)を接種する事をお勧めしています。DPTワクチンを小児期に接種済みの20〜40歳の方は破傷風の免疫記憶が存在するため、1回の破傷風ワクチンで基礎免疫が獲得可能と考えられます。
 40歳以上の人やDPTワクチンなど破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)の接種を行っていない者については、免疫記憶が無いため3回の破傷風ワクチンの接種が推奨されています。(免疫記憶は持続が25〜30年とされており、したがって40歳以降は免疫記憶が失われている可能性が出てくる。また、我が国ではワクチンの副作用の問題で1975年〜1981年の間、DPTワクチンの接種が中止されました。その期間に予防接種を受けた世代は破傷風のワクチン接種をしていない可能性があります。)3回接種の場合、2回目は初回接種の3〜8週間後、3回目は初回接種から6〜18ヶ月後に接種を行います。DPTなど破傷風のワクチン接種の有無が判然としない場合は、接種していないものとして3回接種を行うのが原則です。
 いずれの場合にもワクチン接種により4〜10年の有効免疫が得られます。
 破傷風の免疫力は比較的早期に獲得され、前者の場合はワクチン接種後1週間、後者の場合も2回目のワクチン接種後1週間で十分な有効免疫の獲得が期待できます。
 また、破傷風は土壌から傷口への菌の進入によって感染するため、破傷風の患者からの直接感染はありません
 破傷風菌は世界中の土壌にあまねく分布しています。そのため、上記の被災地で活動される方の以外にも、海外旅行に行かれる方、建設業で働く方、農業に従事する方や家庭菜園・園芸などで土をいじる方などは接種されておくと宜しいと思います。

また、せめてもの復興支援として、東日本大震災の被災地復興に従事する方には破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)接種を無料で対応させていただきたいと思います。これから被災地に向かわれる作業員、ボランティアなどの方々は、ご不安がおありでしたら是非ご相談下さい。(ワクチン備蓄には限りがございますので、予めお電話でご予約下さい)
なりすましはご勘弁下さい。m(_ _)m

代官山パークサイドクリニック
院長 岡宮 裕

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