前回、ヒトの血圧測定が出来る様になったのが、実質的に20世紀に入ってからという事をお話しました。
その後、血圧測定は、医療の現場でも行われるようになったのですが、測定した血圧をどの様に評価しするかは判らない状況がしばらく続いたのです。

血圧の歴史的変遷

血圧に関しての状況が変化するのは第二次世界大戦後になります。
アメリカ合衆国では、退役者を含む軍人の健康調査で、血圧が高い人が、
心筋梗塞などの疾患を生じる率が高いのではないかという疑惑が生じます。

その後、増加傾向にある心血管合併症増加への対応を検討するため、第二次世界大戦終了後の間もない
1948年、米国公衆衛生局が米国北部の住民28000人の町、マサチューセッツ州フラミンガム=Framingham市(Massachusetts州)
において大規模前向き研究は開始しました。この研究は、当時はもとより今日に於いても高い先見性を示したものと評価されていて、研究は続行されています。

フラミンガム研究は世界で最初に高血圧、高コレステロール血症、耐糖能低下が
心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患発症に重要な意義をもつことを示したのです。

日本における血圧の研究

現在、我が国で行われている通称メタボ検診は、この試験をきっかけにした知見に
内臓脂肪=腹囲との関係を加味されたものになっています。
我が国でも第二次世界大戦後、高血圧に関する研究に力を入れる様になります。

なぜ、第二次大戦後かというと、疾病構造の変化があります。
大正、昭和初期などまで、我が国の健康被害=死亡率に於いては、感染症が最も大きな問題となっていました。
それが戦後、1946年頃になると、結核や細菌感染などの感染症による死亡者数が減少し、
その代わりに脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による死亡率が死因の第1位になります。

急増するの血管障害に関しては、高血圧が関与し、なおかつ食塩の接種量と関連がありそうだということが、
現場の医師を中心に経験的に認識されていました。
(脳血管障害には、塩分摂取量の多い東北地方などで、
冬に外の屋外のトイレでいきんだ時=血圧が急に上がった時に多いことなどは、一般的にも知られていました)

疾患と無縁な一般的な人について、高血圧などの要因と、脳血管障害などの動脈硬化性疾患に関する研究も始められることとなります。
上記アメリカのフラミンガム研究に相当するものとして、福岡県の久山町で1961年から開始されます。
これらの疫学的研究を経て、高血圧が心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などに悪影響があるという事が徐々に判明してきました。
そして、塩分制限食とする意義も広く認識されていきます。

しかし、この頃は、血圧はどの位であるべきかという事や、リスクを減少させるためには
血圧をどの程度に下げなくてはいけないかなどの知見はありません。
また、高血圧症と診断されたところで、血圧を有効に下げる薬剤も無いが現状でした。そのため、血圧の治療は殆んどできません。

当時は、脳血管障害につながりかねない、極端に血圧の高い人には、瀉血(しゃけつ)といって、
静脈から血液を大量に抜いて血液量を減らし、血圧を下げるようなことなどが行われ、これがその頃の血圧治療だったのです。
そのため、多少血圧が高い程度の人には、減塩を勧める以外の医療的手段がなかったのです。

高血圧・高脂血症コラム

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