今では医療機関だけでなく家庭でも当たり前のように血圧測定が行われています。
大人では、血圧を測ったことがないという人はまずいないと思います。

では、血圧はいつから測られるようになったのでしょうか。

血圧の歴史

動物における血圧測定の歴史は、1720年にさかのぼります。
スティーブン・ヘイルス(Steven Hales)という牧師が、馬の左頸動脈に銅パイプを挿入し、
それをガラス棒に接続し、血液がガラス棒をどこまで上昇するかを測定する方法で、血圧測定に成功したのです。

ちなみに、その時に測定された馬の血圧は300mmHgだそうです。
しかし、この方法では動物の血圧は測定出来ても、人間の血圧を測定する事は出来ません。

『人間の血圧を測ってみようか。』というのは、当時は医学界においては、質の悪いブラックジョークでした。
※『そんな事したら、患者さんの命が危ないじゃないかい!』という返しのジョークが続くようです。

人間の血圧が実際に測定できるようになったのは、それから実に170年以上経ってからになるのです。
1896年にイタリアの医師ピオーネ・リヴァロッチが水銀柱を使った圧力計とゴム球で加圧するカフを
上腕に巻き付けるタイプの現在の血圧計の原型を開発します。

しかし、血圧計は出来たのですが、これでどうやったら実際の血圧を測れば良いのか、
特に拡張気圧と呼ばれる下の血圧の測定法は誰も判らなかったのです。

ロシア人・コロトコフがカフ圧力により動脈に生じる音を聴診器で測定する際に使われる『コロトコフ音』を発見。
これによって、現在につながる血圧測定の理論が完成。

これにより医学会では、研究の場のみならず、実際の診療にも血圧測定が広く取り入れられるようになって行ったのです。

血圧測定が広く行われると、いろいろなことが判ってきます。

初期の血圧測定

先ず、血圧測定が重要視したのが、救命救急の場でした。
様々な病気や怪我が重篤な状態になった時、血圧を頻回に測定する事によって、生命の危機を把握する事が出来ます。

生命の危機が進行すると、血圧がどんどん低下していき、やがて死を迎えるのです。
そのため、当初は血圧測定に際しては、血圧が高いほど良いとされていました。

そして、救命救急の場ではなくても、血圧は高い方が健康的で良いと考えられていたのです。

実際、私の祖父が医学生時代(太平洋戦争前の話です)に使っていた教科書などには、
血圧については、『血圧は高い方が良い』とされていました。
ただし、心疾患などがある場合は血圧が高いと問題であるとの認識でしたが、
少なくとも健康体の人には血圧は高い方が良いというのが常識だったのです。

血圧測定は、第二次世界大戦頃には、各国で徴兵検査などでも行われた形跡がありますが、
血圧が高い兵士の方が優秀であろうという程度の認識で行われていた様です。
※確かに、低血圧で寝起きが悪い兵士など戦場では使いにくい様な気がしますね。

血圧が高い人の自覚症状がない事もまた、血圧が高い方が良いという考えを後押ししました。
さらに健康に問題のない血圧が高めの人は自覚症状がないばかりか、血圧が正常な人よりも、
元気が良い、良くも悪くも豪快なタイプの人が多い。
こんな事も、血圧が高い方が健康に良いという考えを後押ししたのです。

現在の高血圧症の概念の確立、血圧と健康の関係についての研究は、
第二次世界大戦の後まで待たなくてはならなかったのです。

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