変わりゆく更年期障害の症状 - 現代での特徴は?

従来の更年期障害の典型的なものは、①ほてり(ホットフラッシュ)、②発汗、③イライラを三大症状とするものです。イメージとしては昔の漫画のキャラクターである『オバタリアン』でしょうか。いわゆる元気な更年期障害です。
しかし、現在の日本の更年期障害からはすこし違った像が見えてきます。イメージは悩める静かな更年期障害といったところでしょうか。うつ病もしくはうつ状態を併せ持った更年期障害です。

更年期障害と『うつ』の違いは?

精神科の先生方は、『更年期障害とうつ病の鑑別診断が重要である』と言います。
もちろん重症のうつ病を見逃して病態を複雑化させるのは、厳に避けるべき事であるのは言うまでもありません。しかし、更年期障害とうつ病はそんなにきっぱりと分けられるのでしょうか?
更年期障害とうつ病の境界線は、我々日常診療に従事する“臨床医”の立場からは実にあいまいなものに見えます。更年期とはホルモンバランスと加齢の両方の影響で成立する病態ですが、その本質は、今まで出来ていた事が出来なくなって行く事に対しての身体・精神の反応という観点で捉えると判りやすくなります。
我々の実社会に例を求めると、最初から所有していないものに対する失望や渇望感より、一度は与えられたものを奪われる、既得権を失う事に対する失望や渇望感の方が強いという事は判っていただけると思います。更年期障害とは既得権の剥奪という面で考えると病状の把握がしやすくなります。

少し西洋医学の本筋の考え方からは外れますが。。。

上記の考え方で行くと、更年期障害と『うつ』との関係は少し違った見方が出来ます。
上記の如く更年期の本質を喪失に対する失望と捉えるならば、更年期にはベースに“うつ”の要素を伴っている事は想像に難くありません。少数の例外はあるでしょうが、大切なものや好きな事を失ってうきうきする人はいません。皆、ある程度“うつ的”になります。更年期障害とはもともと“うつ”の要素を内包しているものなのです。
別の見方をすると、更年期障害と“うつ”は一枚の紙の表裏の関係にあります。両方の要素を持ちながら、うつ症状が全面に出て社会生活に支障をきたすものは“更年期のうつ病”と呼ばれ、そうでないものは更年期障害と呼ばれるのではないでしょうか。
これを全く無関係の別のものと捉えるのは、この紙は表だけでできているのか、裏だけでできているのかと考えるようなものだと思います。

そう考えると、精神科的には「うつ病ではないから大丈夫、単なる更年期障害ですよ」と言われたケースでも、『うつ』の火種は常にある と考えて、外来できめ細かく経過を見て行く事が望ましいと考えます。
更年期障害にしてもうつ病にしても、ひとたび診断が下されると、その後長い間方針が見直される事なく継続治療が行われるケースが多々あります。最初に診断した病態は基本変わる事はないと仮定して治療を進める訳ですが、初診時に病態の見落としがあると、何か月も未治療のまま放置される事となります。これは憂慮すべき事態と考えます。

『うつ』を見逃すと大変な事になるかもしれません

では何故『うつ』を見逃してはいけないのでしょうか?
人は誰しも生きていれば、失恋や仕事の失敗、身内の不幸などに際して、多少の“うつ症状”は経験すると思われます。通常の場合はこれらのうつ症状は時間が経てば自然に解決して行きます。
しかし、もしうつ病の要素が存在する場合、うつ症状は時間が経っても自然に良くなることはありません。むしろ症状は悪化の一途をたどります。早めに適切な治療をしないと病状がどんどん悪化して、結果的により強い治療薬の内服が必要となる事になります。

自分では更年期障害だと思っている症状でも、ごくごく軽度のうつ病を合併している場合には知らず知らずのうちにより重いうつ病に発展してゆく事もあります。
また、うつ病により自律神経のバランスが乱れると、ほてりや発汗など更年期障害の身体症状の悪化を招くことがあります。
更年期障害の身体症状の悪化は、さらなるうつ病の悪化を誘発し、それがさらに更年期障害を悪化させる・・・・・更年期障害とうつ病の負のスパイラルが形成されて行きます。

早期であれば軽い治療で良くなる病態を、悪化させてから強い治療を長期間行うというのは何とももったいない話です。この更年期障害とうつ病の負のスパイラルが解ければ、症状は驚くほど良くなる事があります。ぜひとも早めに更年期障害を専門的に診てくれる医療機関を受診すると良いと考えます。

症状に心当たりのある方は、是非ご相談下さい

当、代官山パークサイドクリニックでは『かかりつけの内科医』として、更年期障害とうつ病の合併の場合の診断・治療を行っています。特にうつ病については、スコアシートによる診断や漢方薬などから開始する身体に優しい治療を行っています。
もちろん、心療内科・精神神経科の専門医の診断が必要な重度のうつ病の場合は、責任を持って心療内科・精神神経科を紹介し、一緒に診て行く体制を整えます。
他の心療内科に通院・治療中の方の更年期障害の診察・治療についてのご相談も大歓迎です。お気軽にご相談ください。

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