新型コロナウィルス感染症が世界的に猛威をふるい、我が国でも緊急事態宣言が全国に拡大する事態となっています。テレビも新型コロナウィルス関連のニュース一色となっている感があります。
それらの報道を見ていると、今対応しないと大変なことになるというという事が連呼されていますが、そもそも新型コロナウィルスとは何か、それによる感染症とは何かなどの基本的な情報が伝わっていない気がします。
そこで今回、新型コロナウィルス感染症について、簡単にまとめてみることにします。

① コロナウィルスとは?
コロナウィルスは、各種の哺乳類や鳥を宿主とする一本鎖RNAウィルスで、現在まで50種類以上のウィルスの存在が報告されています。このうちヒトに感染するものは既知のものは6種類、今回の新型コロナウィルスを含めて7種類となります。
人に感染するコロナウィルスのうち症状が軽いものは、4種類あり、これらをまとめてヒトコロナウィルス(H-CoV)と呼ばれています。このH-CoVは、感冒の原因ウィルスとしてごくごく一般的なものであり、感冒の流行時期には原因ウィルスの30%程度を占めると言われています。これは感冒の原因ウィルスとしてインフルエンザウィルスに次ぐ多さとなっています。

② 特別なコロナウィルス
コロナウィルスなど一本鎖RNAウィルスは、遺伝子を一本しか持っていないため、遺伝子情報のバックアップが存在しません。(我々人類などの遺伝子は、二重らせん構造となっているため、その片方に欠損や異常が生じても、対となる遺伝子がバックアップの役割を果たすため、遺伝子異常を修復しやすいメカニズムがあります)
そのため、コロナウィルスは頻繁に遺伝子変異を起こし、次々と新型のウィルスが登場することとなります。
遺伝子変異したコロナウィルスの多くは、ヒトに感染しないか、感染しても通常のコロナウィルス(H-CoV)と同様、重篤な病状となることは稀なウィルスです。しかし、過去にも侮れない“特別なコロナウィルス”がありました。

一つは2002年に、中国広東省で確認された重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすSARS-CoVというコロナウィルスです。重症急性呼吸器症候群(SARS)は、中国国内から始まり、瞬く間に世界32か国に感染拡大しました。SARSという疾患は、基本的には発熱や咳を主体とする感冒症状で、重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を生じ生命に関わることも少なくない疾患でした。SARSは2003年に世界保健機構(WHO)が終息宣言をするレベルまで収まったのですが、それまでの間に世界で感染者数8096人、死者774人。死亡率は9.5%でした。

次に、2012年にサウジアラビアで確認された中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすMERS-CoVというコロナウィルスです。中東呼吸器症候群(MERS)は、現在まで全世界で感染者数2494人、死者858人、致死率は34%に達する恐ろしい疾患です。MERSはサウジアラビア国内のほかは、中東に滞在歴のあるイギリス人とフランス人の数名のみで世界的な広がりは見せずにいたのですが、2015年に突如として韓国で流行します。2015年5月から7月にかけて、韓国では186人の感染者と37人の死者が認められましたが、国を挙げての徹底した感染者の追跡と隔離措置、接触者への積極的な検査を行って、何とか二か月で終息にこぎつけています。WHOの見解では、世界的に見ると現在もMERSは完全には終息していないという事だそうです。

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