⑧ COVID-19=新型コロナウィルス感染症の予防
COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2などのウィルス感染の予防についてですが、一般的な予防方法と、医療機関などでの厳格さが求められる予防方法があります。ここでは、家庭や通常の職場で要求される一般的なレベルでの予防=標準予防対策についての話をします。

標準予防対策を以下にまとめます。
1. 手指衛生:手指に付着したウィルスが粘膜に移行(汚染された手で口などに触れる事によって生じる)することを防ぐ。外出後や食事の前に、石鹸を用いた手指消毒を行う事を基本とする。
手指に加え食品、調理器具、食器などにはアルコール消毒も有効。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2などのエンベロープを持つウィルスに有効なアルコール濃度は70~83%が推奨されています。
2. ウィルス吸入の防止:ウィルスを含む飛沫の吸入を避けることによって感染を防ぐ。いわゆる三密=密集・密室・密接を避け、換気を励行する。不要不急の外出を避け、マスク(可能ならサージカルマスク)を着用し、やむを得ず外出する際には、他者との間隔を2m程度開ける=ソーシャルディスタンスをとる事を可能な限り守る様にする。
3. 器具、リネンなどの消毒:他人、特に不特定多数の人が触れる可能性のあるものなどウィルスが付着している可能性のあるものに対しては、アルコールないし次亜塩素酸ナトリウムでの消毒を行います。
次亜塩素酸ナトリウムの推奨濃度は0.05%。花王のハイターという製品ならば、ハイター25ml(付属のキャップ1杯分)を水1リットルに入れて希釈することで作ることが出来ます。
食器やまな板などは80℃以上の湯で10分間煮沸する事でもウィルスを防ぐことが出来ます。
4. 他者への感染を防ぐ:マスクをつけること。マスクは自分自身の感染防護になるのと同時に、自分自身が感染している場合は、咳やくしゃみによるウィルスを含む飛沫を空間に拡散させない効果があります。そういった観点からは、布マスクであってもマスクの着用は推奨されます。(政府が配布する布マスク=アベノマスクも、無意味ではないと考えます。) COVID-19の特徴として、感染していても症状がない時点から感染力を有するという事を考えると、すべての人がマスクを着用することは社会的な感染予防にとって重要と思います。
5. 感冒症状があるときは隔離をする:現在COVID-19=新型コロナウィルス感染症は指定感染症となっていて、疾患に対し法に基づいた隔離措置が取られることとなります。つまり、入院や隔離が法律によって規定されるため、感染者に拒否する権利がなくなります。
しかし、診断されるまでの間も他者への感染リスクが存在することを考えると、すべての感冒症状がある人は、仕事を休み、外出を避け、家庭内でも居室や食事時間を分けるなどの隔離措置が必須と考えます。

⑨ COVID-19=新型コロナウィルス感染症と年齢、喫煙など
COVID-19=新型コロナウィルス感染症の重症化する率が若年者と高齢者で大きく異なる事は早い段階から言われていました。乳幼児や学童年代は重症化のリスクのみならず発症リスク事態が低いとは言われていますが、以前流行したSARSでは、この年代での発症や死亡例も存在するのでCOVID-19=新型コロナウィルス感染症についても油断は禁物と考えます。

その他、現在までに判明している事を以下に示します。
☆我が国におけるCOVID-19=新型コロナウィルス感染症の死亡リスクは高齢になるほど高くなる傾向にある。70歳以上から有意に死亡率が上昇し、80歳以上では死亡リスクが6倍となる。厚生労働省では60歳以上はリスクが高いとしています。
☆喫煙者は有意に重症化リスク、死亡リスクともに高くなる。
中国、武漢市でのリスク解析によると、喫煙者は非喫煙者に比べて14倍の重症化リスクがあるとのこと。中国での他の地域での研究でも1.7倍、他の国や地域の研究でも3倍程度のリスクがあるとの報告が多い様です。
喫煙による重症化の仕組みは、喫煙による呼吸器疾患の併発や呼吸機能の悪化に加えて、肺の繊毛運動の悪化、サイトカインの低下による細胞修復力低下、SARS-CoV-2の侵入経路とされるACE受容体の活性化=ウィルス感染のリスクを増やす働きによるとされています。
これらは、喫煙歴が長くても、禁煙をすることにより早期に効果が現れるものもあるため、感染する前に禁煙の実施が望まれます。
☆男性の方が重症化リスクが高い:COVID-19=新型コロナウィルス感染症の死亡率でみると、中国・武漢市では男性2.8%、女性1.7%となっています。これについては、男性の方が喫煙率が高いことや手洗いなどの意識が比較的低いこともあり、単純に性差の問題だけとも言い切れませんが、同様なことは他の国でも認められています。男女の喫煙率の差が中国ほどではないイタリアに於いても(イタリアは女性の喫煙率が高め)、死亡率は男性10.6%と女性6.0%と有意に男性が多くなっています。原因として女性ホルモンに重症化回避作用があるのではないかと言われていますが、現在のところはわかっていません。いずれにしても重症化については、男性は特に気を付けた方が良さそうです。

⑩ COVID-19=新型コロナウィルス感染症と基礎疾患について
年齢同様もしくはそれ以上にCOVID-19=新型コロナウィルス感染症の重症化リスクについては、基礎疾患の有無が影響します。要するに慢性疾患を抱えていると重症化しやすく、かつ死亡リスクが高いという事になるのです。
基礎疾患について、厚生労働省は以下に該当する人に注意を呼び掛けています。
☆高齢者
☆糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPDなど)、腎不全で人工透析を受けている人
☆免疫抑制剤、抗がん剤投与を受けている人
☆妊婦の方:妊婦がCOVID-19=新型コロナウィルス感染症が重症化するという報告はありませんが、一般論として妊娠中の方はウィルス性疾患が悪化するリスクがあるため注意を払うべきと考えられています。また、妊娠中の胎児への垂直感染は中国での9例の報告では認められていません。(妊娠中のSARS-CoV-2感染は、胎児には直接は感染しないという事です)
☆肥満(特に高度肥満):厚生労働省の示すリスクには含まれていないのですが、欧米では肥満度が高いほど重症化のリスクが高いと言われています。アメリカ合衆国では、BMI40以上の高度肥満の場合は極端に重症化、死亡リスクが高まるとの事です。(BMI40というのは、身長160㎝では体重102.4kgの人。日本人ではなかなかいない肥満者ですが。)
いずれにしても、程度にかかわらず肥満を避ける事は重要と考えます。ただし、急激な減量を行う事は、免疫力をかえって弱める可能性もあるため注意が必要です。

また、中国・武漢市での死者のうち、持病が判る400例についての研究結果では以下となっています。
疾患を持っている人の割合(死亡率)
高血圧39.7%(6.0%) 循環器疾患22.7%(10.5%) 糖尿病19.7%(7.3%)
慢性呼吸器疾患7.9%(6.3%) がん1.5%(5.6%)
呼吸器疾患やがんの死亡率が高いのはある程度予想できるのですが、糖尿病や、さらに高血圧を含む循環器系の疾患のリスクが高いことに驚かされます。
慢性疾患を持っている方は、ウィルス感染に気を付けることはもちろん、原疾患の治療を怠らない事が重要です。
間違っても、新型コロナウィルス感染症が怖いからといって、通院中止=通常の治療薬を自己判断でやめてしまったりしない事が重要です。

⑪ COVID-19=新型コロナウィルス感染症の今後
最大の関心事項は、今後COVID-19=新型コロナウィルス感染症がどうなっていくのかです。正確なところは誰にも分らないのですが、現時点では以下の事が考えられます。

☆完全な封じ込めは極めて困難:患者再生産数が3を超えるなど、極めて感染力が高く、潜伏期間や罹患期間が長く、無症状の感染者からの感染が多数存在することより、SARSやMERSなどと同様の完全な封じ込めは極めて困難。
☆完全な封じ込めが出来なくても、かつての香港型やパンデミック型のインフルエンザのように季節性疾患として定着して、実質的被害は許容範囲内となる可能性もある。
☆しかし、爆発的な感染拡大は、医療崩壊を起こし、それにより重症化したCOVID-19=新型コロナウィルス感染症の患者を救えないのみならず、他の疾患の救命治療にも支障をきたす医療崩壊は避けなくてはならない。
☆そのためには、現在我が国でも行われている行動制限は必要であろう。
☆インフルエンザウィルスを例にとると、ウィルス自体の生存率は、気温20℃以上、湿度50%以上では極端に低下する。この事より、COVID-19=新型コロナウィルス感染症も今後、夏に向けて一旦落ち着くという考え方もあります。(こんな神風を待つ態度で良いのかは別として)
しかし、都合よく季節性の要素で落ち着いたとしても、この冬以降はまた猛威を振るうことは大いに在りうるため、対策は必要と考えます。
☆季節性の疾患としてこのSARS-CoV-2というウィルスと折り合っていくにはワクチンの開発が必須である。しかし、ワクチンの開発には少なくとも一年半以上を要するとされており、その間は感染拡大を防ぐ努力を続けるしかない。その間の国家経済を如何に支えるかなど、課題は多い。
☆韓国で、一度は治癒したCOVID-19=新型コロナウィルス感染症の患者100人以上に再度のPCR反応陽性が見られたとのこと。検査の精度の問題点も指摘されているますが、もしもウィルスが身体内に残存し、感染力を再獲得するような事態になると重大な事態になる可能性があります。
☆世界保健機構(WHO)の対応が中国寄りであったとして、アメリカ合衆国が分担金の拠出停止を宣言しています。COVID-19=新型コロナウィルス感染症を克服するためには、WHOのもとで世界各国が一致協力することが必要で、この場に政争はもとより政治的意図を含む行動は慎むべきです。また、情報の隠蔽や誤魔化しも致命的な判断ミスにつながるため行うべきではないと考えます。

以上、COVID-19=新型コロナウィルス感染症について、簡単にまとめてみました。
今後、新しい知見が出たら適宜ご紹介したいと思っています。

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