ヒスタグロビン注射によるアトピー治療 ⑥アトピーと漢方治療


アトピー性皮膚炎の漢方治療についての話をします。
 最初に結論から言うと、アトピー性皮膚炎を何が何でも漢方だけで治療するのは良くありません。(アレルギー性鼻炎など、他のアレルギーを漢方薬のみで治療する事はしばしばありますが、それはまた別の話です。)
 当クリニックでは、アトピー性皮膚炎の漢方治療に力を入れていますが、あくまでも補助療法ないし体質改善という位置づけです。そのあたりを前提とした話をします。

 アトピー性皮膚炎に漢方を使う目的は以下があります。
① 漢方を使う事によって、抗ヒスタミン剤やステロイドの使用量を減らし、治療における身体にかかる負担を軽減する。いわゆる「露払い」目的での使用。
② 抗ヒスタミン剤による皮膚や粘膜の乾燥、ステロイド外用薬による皮膚の色素沈着など、標準治療における副作用を緩和する効果。
③ 皮膚の過乾燥や過湿潤、いわゆる“かさかさ”や“じゅくじゅく”を直接直す効果。例えば、西洋医学の標準治療だと、ステロイド外用は炎症やアレルギーの反応を抑制する事によって、結果的にこれらの症状を改善する事は出来ても、直接改善する効果はありません。そのため、乾燥や浸出液を完全に良くなるまで治療レベルを上げると、必然的に治療が過剰になる恐れがあります。漢方にこのあたりの役割を担わせる事で、過剰な治療を防ぎ、身体に負担の少ない治療とする事が出来ます。
④ アトピー性皮膚炎による胃腸のトラブルの治療、予防目的。アトピー性皮膚炎の方は、胃腸のトラブルを抱えている事も多いのですが、胃腸の不調は更なるアトピー性皮膚炎の悪化を招くというデフレスパイラルを引き起こします。西洋医学の胃腸の薬は、胃酸濃度を下げるものなど、胃腸の症状は改善するも消化機能を低下させる薬が主流のため、胃腸症状はおさまってもアトピーは悪化させる可能性があります。漢方薬であれば、胃腸症状の改善とアトピーの改善の双方を目指すことができます。
⑤ 上記④とも共通するのですが、胃腸機能の低下は、東洋医学的には、食物から得られる“気=生命エネルギー(後天の気)”の低下を招きます。“気”の低下は身体の治癒力の低下を招き、アトピーの悪化を招きます。逆に、気を高める事によってアトピーの自己治癒力を上げる、すなわち長期的に見てのアトピーの治癒につながるのです。胃腸とアトピー性皮膚炎は関連なしとする西洋医学では決して得られない、いわゆる体質改善につながる効果が期待できます。
⑥ 精神的な負担に対する効果。アトピー性皮膚炎による掻痒感や皮膚の性情の悪化は精神的にも大きな負担があります。これに対して、上記の“気”が増してくれば、心身ともに余裕が出来て、精神的にも安定してきます。(私は、冗談で、“気”をお金に例えて「金持ち喧嘩せず効果」と呼んでいます。例えに品がなくてすみません。)また、漢方薬で直接精神安定を図る事も出来ます。精神科的な薬と違って、ぼーっとする様な副作用がない治療が可能です。
⑦ 肌質の改善効果が期待できる。これについては、患者さまそれぞれの状況で大きく異なるため、個別に対応する必要がありますが、この辺りは、西洋医学では、全く顧みられる事のない領域です。(美容皮膚科やアンチエイジング治療など、自由診療では行っていますが、漢方の目指すところとは全く違う方向性です。両者の併用も可能です。むしろ併用も望ましいと個人的には考えています。)

 以上、漢方薬をアトピー性皮膚炎に用いる意義の総論を述べました。漢方薬の事は、また漢方のページに詳しく載せたいと思います。

 次回は、今までの事を踏まえたうえでの、アトピー性皮膚炎の治療計画についてのお話をします。「長い治療と短い治療」です。