女性の更年期障害(更年期症候群)の話③-更年期障害の検査・診断について


医師による検査・診断

前回までは更年期障害のあらましと、なぜ起こるかについてお話ししました。
今回は具体的な検査・診断の話をしたいと思います。当クリニックの女性更年期外来では、このような流れで診療を行います。

女性更年期外来の初診時の検査

1)まず簡易更年期スコア(SMIスコア)に記入して頂きます。
このSMIスコアの数値によって更年期障害の程度を推定します。

2)次に血液検査をします。
血液検査では必ずホルモン系(女性ホルモンなど)の測定をします。
・卵胞ホルモン(エストラジオール)【E2】
・卵胞刺激ホルモン【FSH】
・黄体ホルモン【LH】
・男性ホルモン(テストステロン)【T】

3)また、診察で詳しくお話しをお聞きし、症状・所見から判断したうえで
・更年期障害と鑑別が必要な病態や合併症の有無
・貧血の有無
・肝機能障害の有無
・電解質異常の有無
・高脂血症や高血圧の合併
なども初診時の採血時(もしくは2回目の採血時)にホルモン系検査と併せて精査します。

近年ではうつ病を合併しているケースも見受けられますので、症状が診られる方には、うつ診断用スコアシートなどを用いて検査します。

検査結果が出るまでは概ね一週間を要します。

血液検査の結果からわかること

典型的な更年期障害のパターンでは概ね下記のような結果となります。

※ホルモン系※
まず、身体が女性ホルモンを欲しがっているかの程度を表す【卵胞刺激ホルモン:FSH】が上昇傾向を示します。FSHの上昇は閉経に先立つ数年前から見られる事もあり、更年期障害の傾向を最も早期に診断する事が出来るマーカーのひとつです。
次いで【卵胞ホルモン(エストラジオール):E2】の低下【黄体ホルモン:LH】の上昇が見られると閉経傾向が確定的となります。更年期障害の程度は、ホルモンの動向だけではなく、身体的・精神的な様々な因子が複雑に関与しますが、ホルモン値によって更年期障害の程度を大まかに推測する事が可能です。エストラジオールが30以下、FSHが50以上の両方を満たしているものは、平均より高度(重度)の更年期障害である可能性が高いと推測します。また、LHの上昇は女性ホルモンの低下傾向が不可逆的である事を示し、閉経傾向にある事を推測させます。

女性ホルモンと同時に【男性ホルモン(テストステロン):T】を測定するのにも訳があります。ひとつは女性ホルモンと男性ホルモンのバランスを見るのですが、もう一つの測定意義はテストステロンが女性更年期障害のメンタルトラブルの指標となるという点です。実はテストステロンは女性においては脳内で重要な役割を果たしている事が最近の研究で判ってきています。
※余談ですが、女性の議員や女性の企業家の男性ホルモンの値は一般女性に較べて有意に高い事が知られています。男性ホルモン(テストステロン)の値が低い方については、更年期のメンタル症状が出ていないかをチェックする様にしています。

女性ホルモン系以外でもいくつかの変化が見られます。
先ずは血圧が高くなる傾向が出てきます。これはほぼ全ての女性に見られますが、そのまま経過を見ていけば良いものと、降圧剤や漢方薬などで治療をしなくてはいけない場合まで、症状は多岐にわたります。
次に、コレステロールや中性脂肪などが上昇する傾向を示します。これも血圧と同様に、経過観察で十分な場合と、脂質異常症として治療を要する場合があります。
また女性ホルモン分泌の低下で粘膜や皮膚の性状が変化するため、婦人科や皮膚科のトラブルもしばしば見受けられます。
その他、糖尿病や肝機能障害、腎機能低下などの異常が見られる事もありますが、これらは女性ホルモン低下による症状である更年期障害の影響というよりは、加齢性の変化による影響によると考えられます。

その他では、うつ病との鑑別や、更年期障害とうつ病の合併を診断する事が重要です。この辺りはSDSスコアなどのチェックシートを活用しています。