セレン

人間の生命維持に欠かせない元素を必須元素といいます。その中で、必要量はほんの僅かですが、欠乏すると生命維持・発育・生殖に支障をきたす物質が『必須微量元素』です。いわば人体のレアアースですね。その中のひとつであるセレン(セレニウム)はその重要性が近年になって判明してきています。セレンの話をします。

セレンとは?

セレンは亜鉛やビタミンE とともに体の抗酸化作用に重要な役割を果たしています。セレンは体の中で産生された活性酸素を積極的に除去する事により、ビタミンE の実に50~100倍の抗酸化作用を持つといわれています。つまりセレンは活性酸素の除去により肌や血管、筋肉などの老化を遅らせるため①高いアンチエイジング効果を持っています。その他にもセレンは②ガンの発生・転移の抑制、③うっ血性心不全や心筋梗塞、脳血管障害の予防、④体内の有害ミネラル(水銀など)に対するデトックス効果、⑤女性の月経リズムや生殖活動を助ける、⑥女性更年期障害の症状を緩和する、⑦胃腸機能に良いなどの効果が知られています。
この様に女性の生殖活動や更年期障害には効果があるセレンですが、では男性にはどうなのでしょうか?

LOH症候群とセレン

実は男性にとってセレンは女性以上に効果のある物質なのです。セレンは、男性の精巣発達を促し、男性ホルモンの分泌レベルを増大させます。また、セレンは精子の形成、運動性などに関与します。セレン不足は同じ必須微量元素である銅・カドミウム・鉛の不足と共に男性不妊症の原因となり得ます。私の以前のコラムでも男性ホルモン(テストステロン)の低下によるLOH症候群(男性更年期障害)を扱っていますが、必要量のセレンの摂取はLOH症候群の予防・治療にも効果があります。
特に最近は、TV等でもLOH症候群が取り上げられるなど、男性の更年期症状についての世間的関心が高まりつつあります。2009年に代官山にクリニックを開業してまもなくから『男性更年期の専門外来』を行ってきましたが、特に最近の患者来院数の増加には驚いています。LOH症候群の患者様の中には、ストレスや食生活の乱れが原因の一つと考えられる方も少なくありません。そのような方にはLOH症候群の治療と同時に、セレンについてご説明する場合もあります。私なりに考えた結果、LOH症候群とセレン摂取量にはなにかしらの関連があると思ったからです。

セレンはどうやって摂ればいいの??

セレンの必要摂取量は文献により諸説ありますが、1日30~60μgといわれています。また妊娠時には必要量が増加するとの報告もあります。セレンは従来までの日本人の食生活では不足しませんでしたが、井戸水を飲まなくなったこと、魚食から肉食にシフトしたこと、玄米や雑穀入りのご飯を食べなくなったこと、外食比率(惣菜を含む)が増えたことなどの原因によりしばしば不足するようになってきています。食事でセレンを補っていくには下記の食品がおすすめです。
① 長ネギ(1本で50μg程度のセレンが補えます)、玉ねぎ
② カキ(生牡蠣)
③ いわしなどの魚
また、セレンはサプリメントとしても接種できますので、どうしても食事が乱れがちな人や早期の改善を望む場合は、適切なサプリメントで補充するのもひとつの有効な手段と考えられます。
しかし、セレンは大量に摂取すると中毒症状を生じる恐れもあります。症状が改善しないからといってサプリメントなどで大量に摂取することは、逆効果となる恐れもあります。サプリメント内服の際は病院・クリニックなどの医療機関に相談される事をお勧めします。

セレンにまつわるお話し

ヨーロッパの中で、土壌中のセレンの含有量が少ないといわれるフランスでは、皇帝ナポレオンがフランス軍の出陣に際して、部下に大量の牡蠣を振舞ったといわれています。また、中国中央部の平原の土壌はセレンの含有量が少ない事が知られていますが、その北方のモンゴルの地は土壌中のセレン濃度が中国に比べて優位に高い事が知られています。横綱白鵬関や、アジアを席捲したジンギスカンの軍団などモンゴルの男達の強さは豊富に摂取したセレンによるものかもしれないですね。

当、代官山パークサイドクリニックではLOH症候群、女性更年期障害など最近元気がないという、通称『不元気症候群』の診断、治療を行っています。
更年期症状(男女問わず)の改善は、セレンの摂取だけでは効果が出ない場合もあります。その場合は他の治療を組み合わせながら、適切なセレン摂取を指導することも可能です。【ご夫婦で受診できる更年期外来】を目指しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

一口メモ ~こんなに凄い"たまねぎ"~
 玉ねぎは先述のセレンを豊富に含むのみならず、他にもビタミンB群、ビタミンC、カリウム、カルシウム、鉄などがバランス良く含まれており古来より疲労回復に欠かせない食材として重用されてきました。また、玉ねぎはケルセチンや辛味成分である硫化プロピル、臭い成分である硫化アリルなどの有効成分が他の野菜類に比べて多く含まれているため、下記の様な良い効果があります。
  • ① 血圧安定作用
  • ② 動脈硬化の改善、血中脂質(コレステロール)改善作用
  • ③ 健胃作用、(虚弱な人の)食欲増進作用、整腸作用
  • ④ 疲労回復、情緒安定作用
  • ⑤ 血栓予防効果(血液サラサラ効果)
  • ⑥ 殺菌作用
  • ⑦ 高血糖抑制作用
  • ⑧ 男性ホルモン増加作用

上記の効果で たまねぎ は高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳梗塞・脳出血など成人病の発症、進展に対して大きな効果を持ちます。
たまねぎは切ると涙が出ますが、これは玉ねぎに含まれる硫化アリルが放出されるためです。上記の玉ねぎの効果はこの硫化アリルの働きによるところが大きいといわれています。
硫化アリルはセレンに勝るとも劣らない男性ホルモンの増加効果が有る事が判明しています。男性ホルモン増加、成人病予防、疲労回復、精神安定とまさにLOH症候群(ロー症候群)の改善にはうってつけの食材といえます。硫化アリルは他に長ねぎ、ニンニク、行者ニンニクにも含まれており、これらの食材も男性ホルモンの改善効果があります。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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