アレルギー性結膜炎・眼瞼炎

花粉症による目のかゆみはとても辛いものですね。痒いだけでなく涙も止まらなくなったり、仕事に集中できなくなったり、生活に多大な支障をきたします。
もちろん痒いからといって、掻いたりこすったりしては余計に症状が悪化しますので、きちんとした対策が必要です。

花粉症の症状において、目のかゆみは全体の約83%の人に見られる症状です。かなり多いですね。

花粉症の目のかゆみは、“目の周りがかゆい眼瞼炎” と “眼球そのものが痒いアレルギー性結膜炎” とに分けられます。
眼瞼炎では、重症化するとアレルギー性皮膚炎を併発することもあります。目の周りがかゆくなって赤くなってパンダみたいになってしまうケースですね。そうなるとかなりつらいです。アレルギー性結膜炎の場合、どうしても目をこすってしまうため、こすりすぎで眼球を傷つけてしまったり、他の雑菌に感染したりと、症状を放置しておくのは危険です。
それぞれによって治療法が少し変わりますので、その辺も踏まえ、少し詳しく解説したいと思います。

目のかゆみの治療

●眼瞼炎の治療
眼瞼炎の治療は、まず痒みを止め、赤く荒れてしまった皮膚の炎症を抑えることが重要です。

  • 内服の抗ヒスタミン剤:基本処方です。目の周りは皮膚も薄く、眼球への刺激も避ける必要があり、強い塗り薬が使いにくいため、内服薬でかゆみを止めることが必要です。
  • 外用薬:目に入っても大丈夫な薬から選択する必要があるため、薬の種類が極めて限られます。当院では弱いステロイドの塗り薬を処方するケースが多くなっています。(商品名:ネオメドロールEEなど)
  • ノイロトロピン注射:化学合成によらない注射薬。副作用が少なく、依存性も全く無い。定期的に接種することでアレルギー症状を抑えることに一定の効果を期待することができます。

●アレルギー性結膜炎の治療
アレルギー性結膜炎の治療の基本は先ず眼球の刺激を少なくする事です。コンタクトレンズの使用はアレルギー性結膜炎の症状を倍増させます。可能であれば花粉症の時期だけでもコンタクトレンズから眼鏡に変えるとそれだけでも症状は軽減します。眼鏡は花粉が眼球に接触する事を妨げる効果もありますので一石二鳥です。花粉症用のゴーグルタイプのものはさらに有効です。
通常の目薬は防腐剤が入っているためコンタクトレンズの上からは点せません。目薬の治療という観点からも眼鏡の使用が望ましいと考えます。
では、その治療方を紹介します。

  • 点眼の抗ヒスタミン剤:比較的安全に使える第一選択薬です。一日4回など頻回に使用できる利点がありますが、コンタクトレンズの上からは使用できません。また、点眼後30分空けないとコンタクトレンズの装着ができません。
  • 点眼のステロイド薬:一日1~2回投与と簡便で、持続性がありますが即効性にはやや欠けるものが多いとされます。定期的に使用する事で効果が高まり、ステロイドといっても体内に殆ど吸収されないため副作用は少ない安全な治療法です。
  • 内服の抗ヒスタミン薬もしくは他の抗アレルギー薬:抗ヒスタミン剤は効果的ですが眠くなるなどの副作用があります。他の抗アレルギー薬は副作用は比較的少ないですが、効果が最大限に達するまで時間がかかることが多いとされています。
  • ノイロトロピン注射:化学合成によらない注射薬です。副作用が少なく、依存性も全くありません。定期的に接種することでアレルギー症状を抑えることに一定の効果を期待することができます。
  • プラセンタ注射:直接アレルギーを抑える作用に加え、粘膜や皮膚の状態を良くする間接的作用も期待できます。おすすめの注射治療ですが、花粉症に対しては保険適応にならず、自費治療となり、費用がかさみます。

《漢方薬による治療》皮膚炎がひどい人向けの治療

目の痒みについて漢方薬治療を行う場合は、上記の様に『眼瞼炎』と『アレルギー性結膜炎』とに分けて考える事はありません。

目のかゆみは主には水毒(体の中の水分のバランス異常がある状態)が関与していることが多いため、基本処方は19番・小青竜湯(ショウセイリュウトウ)です。症状が激しい時は、体内に“熱”を持っていると考え、冷ます方剤である石膏(セッコウ)の入った28番・越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)を使用します。熱証タイプの人の急性期には1番・葛根湯(カッコントウ)が有効なこともあります。葛根湯が合う証で便秘傾向の人には『 葛根湯加川きゅう大黄 (カッコントウカセンキュウダイオウ)』が効きますが、エキス剤には無いので2番・ 葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)84番・大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)を混ぜたもので代用します。
基本的には寒証である人が激しい目のかゆみを生じた場合もしくは胃腸が丈夫ではない人の場合には、19番・小青竜湯に少量の28番・越婢加朮湯を併用します。寒証かつ虚証の人で悪寒・手足の冷えが有る人には127番・麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシトウ)を使います。
麻黄剤が使えない場合は19番・小青竜湯の代わりに119番・苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)28番・越婢加朮湯の代わりに39番・苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)を用います。
症状が慢性化した場合には実証の場合には58番・清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)113番・三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)を使います。虚証の人には39番・苓桂朮甘湯の加方である『明朗散(メイロウサン)』が有効ですが、エキス剤には無いため煎じ薬になります。

その他、ステロイド点眼薬を長期に渡って使用している場合は、炎症を抑える作用をもつ柴胡剤である9番・小柴胡湯(ショウサイコトウ)114番・柴苓湯(サイレイトウ)などや、 駆?血剤 である25番・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)などを内服する事によってステロイド点眼薬を減量できる事があります。

上記に加え、特に目の周りの皮膚の荒れが強い時には漢方薬 『桂枝加黄耆湯(ケイシカオウギトウ)TYO26』を使います。桂枝加黄耆湯・TYO26は実証の人にも虚証の人にも使える優れた漢方薬です。桂枝加黄耆湯・TYO26に荊芥(ケイガイ)・連翹(レンギョウ)を加えた漢方薬はさらに効果があり、アトピー性皮膚炎にも有効ですが、煎じ薬としてしか処方できないという欠点があります。花粉症によるアレルギー性皮膚炎に対する漢方薬を処方する事もあります。

※目の周囲の皮膚炎の治療には、一般的に、
実証の人(比較的体格が良く、体力に優れていて、赤ら顔、高血圧の傾向の方)には28番・越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)57番・温清飲(ウンセイイン)
虚証の人(比較的痩せ形で貧血傾向、低血圧傾向という“虚弱体質“の人)には、48番・十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
を使いますが、私の第一選択として桂枝加黄耆湯・TYO26を処方することが多いです。

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