花粉症に伴う鼻症状としては、『くしゃみ・鼻水・鼻づまり』の他に鼻の粘膜の乾燥によるものもあります。
これにより鼻の違和感や繰り返す鼻出血(はなぢ)を生じる場合もあります。
鼻の中はもともと柔らかい粘膜でできており、血管がたくさんあるので出血しやすい場所と言えます。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりのお決まりの症状がでてくると、何度も鼻をかんだり、かいたり、こすったりと刺激を与えることが増えるので、毛細血管が破れて出血してしまうというわけです。

鼻の違和感(乾燥)、鼻血も、治療により緩和することが可能です。とくに鼻血がひどい場合は、仕事や日常生活に支障を来すこともありますので、花粉症の時期に鼻血が出やすい方はしっかりと対策しておくと良いでしょう。

治療法としては、殆どのケースで鼻汁(鼻水)・鼻閉(鼻づまり)を合併しているため、それに対する治療との兼ね合いを考慮する必要があります。

1.鼻の違和感(乾燥)についての治療

花粉症の鼻症状の基本治療である【抗ヒスタミン剤】の内服薬は、薬の特性として鼻の粘膜を若干乾燥させます。また点鼻薬はすべて鼻腔の粘膜を刺激しますので、鼻の違和感や粘膜の痛みを悪化させる可能性があります。
そのため鼻の違和感、痛みが強い場合は漢方薬を第一選択とすると良いと考えます。漢方薬の選択については鼻汁と鼻閉と同じです。
→こちらをご参照ください。

2.鼻出血(鼻血:はなぢ)についての治療

花粉症に伴う鼻出血の場合は、副鼻腔炎が生じているか否かの診断が重要です。通常は検査を行います。それによって治療方針が大きく異なります。

A. 副鼻腔炎に伴う鼻出血の場合

  • 抗生物質:マクロライド、セフェム、キノロン系などの抗生剤の内服を行います。中等度以上の副鼻腔炎には必ず抗生剤を使用し、以下の治療薬を併用します。
  • トラネキサム酸:注射と内服薬があります。内服薬はトランサミンという商品名です。炎症を抑える効果と止血効果を併せ持つ副作用の少ない薬です。皮膚や粘膜を整える効果もあります。
  • 漢方薬:→漢方薬による鼻出血の治療の項をご覧ください

B. 副鼻腔炎を伴わない鼻出血の場合

  • トラネキサム酸:商品名トランサミン。上記参照のこと。
  • 血管強化薬:商品名アドナ。血管抵抗性の増強により皮膚・粘膜からの出血を改善する。
  • 漢方薬:→漢方薬による鼻出血の治療の項をご覧ください

漢方薬による鼻出血の治療

これまでの、【熱証】【寒証】に加え、今回は下記の2つの【証】を組み合わせて考える必要があります。※1・2参照
・【実証】(ジッショウ) 比較的体格が良く、体力に優れていて、赤ら顔、高血圧の傾向がある方
・【虚証】(キョショウ) 比較的痩せ形で貧血傾向、低血圧傾向という“虚弱体質“の方

東洋医学的には、鼻出血は気血の上衝と考えます。

① 15番・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)

実証タイプの人の鼻出血に効果が高いです。さらに便秘傾向のある人は113番・三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)を処方します。15番・黄連解毒湯は症状が出現してから対症療法的にも使えますが、予防投与としてあらかじめ内服する様な使い方も可能です。しばしば鼻出血を生じる人はぜひとも常備薬として備えておきたいところです。

② 61番・桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

実証タイプの女性に対して有効なことがあります。本来は月経困難症の漢方薬です。

③ 77番・帰膠艾湯(キキュウガイトウ)

寒証かつ虚証タイプの人の鼻出血に対する漢方薬です。寒証とは体に冷えを有する者。実証タイプの鼻出血には殆ど効果を示さないため、注意が必要です。ベースとなる71番・四物湯(シモツトウ)にアキョウ、ガイヨウを加えたものであり、皮膚の補修効果ないしは美肌効果があるため、花粉症でアレルギー性皮膚炎も生じる人には一石二鳥の効果があります。

④ 99番・小建中湯(ショウケンチュウトウ) 32番・人参湯(ニンジントウ)

花粉症に限らず、腹痛・過敏性腸症候群の下痢を呈する胃腸虚弱があるタイプの人の繰り返す鼻出血に有効な漢方薬。99番・小建中湯は小児に、32番・人参湯(ニンジントウ)は虚証の成人に使用する事が多いです。

※1【熱傷】(ネッショウ - 顔色が赤く興奮的で熱状を帯びる)
※2【寒証】(カンショウ - 顔色が蒼白く沈衰的で手足の冷える様なタイプ)

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