頭痛でお悩みの方は多いと思います。今回は、頭痛に効く漢方についてのお話をしたいと思います。
先ずは、頭痛に漢方を使うメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。
頭痛が起こった場合に、現代の医学ではロキソニンなどの消炎鎮痛剤を使います。消炎鎮痛剤は、大きな副作用もなく確実に頭痛をおさめてくれる便利な薬剤であり、頭痛の対症療法での基本となるものです。ロキソニンに替わりうる漢方治療は残念ながら存在しません。漢方の世界での頭痛の対症療法の決め手は、一つはカフェイン、それに加えて麻薬系の成分となります。カフェインは、普段滅多に摂取しない人(生まれてこの方飲んだカフェイン入り飲料の総量を数えられる程度の人)にとっては劇的な効果をきたしますが、現代人にとってカフェインは連日摂取によりある種の飽和状態となっているため効果は減弱しており、実質的には使えません。また、麻薬系の成分の多くは現代の法律に抵触するため使えません。
そのため、起こってしまった頭痛には、ロキソニンなどの消炎剤を頓用することになります。
では、頭痛に対する漢方はどのような役割を持っているのでしょうか。
頭痛の治療で漢方が活躍する場合は、消炎剤の露払い的な役割と、補助的な役割となります。
漢方の有効な頭痛の特徴は、①冷えを有する人の頭痛、②水毒(すいどく)から来る頭痛、③習慣性頭痛ないし片頭痛(の補助治療)となります。
① 冷えを有する人の頭痛:普段より冷えがある人は頭痛になりやすい傾向があります。これに対する漢方治療としては、胃腸の冷えを持つ人に対しては、『桂枝人参湯(けいしにんじんとう)』、全身の冷えがある頻回の頭痛には『呉茱萸湯(ごしゅゆとう)』が有効です。普段冷えがあるかどうかは別として、寒気を強く感じての頭痛の対症療法には、『麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)』や『葛根湯(かっこんとう)』が有効です。これらの漢方は、感冒の治療にも使われるため、感冒の初期の頭痛にも極めて有効です。冷えの悪化か感冒かわからない場合でも使えるのは便利ですね。
② 水毒という証(しょう=体質)=体内の水のバランスが崩れた状態に生じる頭痛:アルコールを飲みすぎたり、熱中症の時に生じる頭痛がこれに相当します。水毒がある時の頭痛には、『五苓散(ごれいさん)』が即効性をもって有効です。水毒の頭痛、特に熱中症傾向の頭痛には、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤が効きにくいケースが少なくないのですが、この場合でも五苓散は極めて有効です。アルコールを飲んだ翌日に浮腫みと頭痛が必発するタイプの人も活用したい漢方です。五苓散は、飲酒後にも有効ですが、あらかじめ飲んでおけば、飲酒による頭痛の程度を緩和する予防的な内服も可能です。
③ 習慣性の頭痛や片頭痛については、頭痛を直す目的ではなく頻度や程度を減少させる目的で漢方を使います。いずれも内服に適する体質としては“慢性的な冷え”=身体の奥底にある根深い冷えが手掛かりとなります。このタイプの頭痛には『呉茱萸湯(ごしゅゆとう)』が第一選択となります。さらに強い冷えを持つ人には、より強力に冷えを直すタイプの『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)』を使います。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えが強すぎて四肢にしもやけが出来たり、冷えからくるお尻から腰の慢性的な痛みにも効果的な漢方です。
頭痛に対する対症療法的な漢方の定番はないとお話しましたが、人によっては良く効くため、使ってみる価値のある対症療法の漢方もあります。
東洋医学での頭痛に対する合法的治療薬の一つに前述のカフェインがあります。漢方ではカフェインは茶葉(ちゃよう)という生薬を使います。要は普通のお茶の葉です。茶葉を含む頭痛に対する漢方としては、『川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)』が使われます。川芎茶調散は、通常の頭痛に加えて頭痛がひどい感冒の時にも良く効きます。頭痛がひどい感冒の場合には、通常は総合感冒薬であるPL顆粒を良く使いますが、川芎茶調散に麻黄附子細辛湯を合わせて飲む事で同様の効果を期待できます。
頭痛に嘔気や嘔吐を伴う場合=“頭が痛すぎて吐いちゃった状態”にも漢方は便利です。ロキソニンなどの消炎鎮痛剤は、確実に頭痛を抑えてくれるかわりに消化器系に負荷をかけます。そのため、嘔気や胃炎を悪化させることがあります。このケースでは、川芎茶調散に半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を併用する事で副作用が少なく、即効性を持って症状をおさめる事が期待できます。
他にも体質的な頭痛として、高血圧に伴う慢性的な頭痛もしくは頭重感があります。これらの症状に対しては、血圧治療が基本となります。しかし、血圧が安定しても頭重感が取れない場合もあります。この様な場合は、脳外科的な異常がないかを確認したうえで、異常がなければ漢方を使うことも検討しても良いかもしれません。高血圧を合併した頭痛には、『七物降下湯(しちもつこうかとう)』、『釣藤散(ちょうとうさん)』等を体質に合わせて使い分けています。頭痛や頭重感の対症療法に漢方を開始して、結果的に降圧剤の量を減量できる方も数多くいらっしゃいます。
漢方は同じ症状であってもその人の体質=証によって異なる漢方が適応となります。頭痛でお悩みの患者様で、漢方を飲んでみたい方は、一度漢方薬を処方してくれる医療機関に相談される事をお勧めします。
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