漢方薬の話:補中益気湯~疲れやすい人の体質改善に効く漢方


補中益気湯

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は12世紀に李東垣 (りとうえん)の『内外傷弁惑論(ないがいしょうべんわくろん)』に記載された漢方薬ですが、その後の『万病回春 (まんびょうかいしゅん)』の記述が優れており、これを引用する場合が多くなっています。補中益気湯については、慢性的な疲れ・長引くダルさのための漢方外来ページもご覧下さい。

生薬

 漢方薬は自然の草木や鉱物などの成分である『生薬』を組み合わせて出来ています。補中益気湯は以下の10種類の生薬から構成されています。

 

上記のうち中心となって働くのが人参(ニンジン)と黄耆(オウギ)です。体力と気力を補い、免疫力をアップさせる原動力となる生薬の組み合わせです。この二つの生薬が入った漢方は『人耆剤(ジンギザイ)』というカテゴリーに分類されます。白朮(ビャクジュツ)もこの効果を手助けします。

 また、柴胡(サイコ)、升麻(ショウマ)は取り込んだ“気”をさらに高めて精神的に元気にさせます。陳皮(チンピ)は横隔膜の上下の“気”を行き来しやすくします。大棗(タイソウ)は脾胃(ひい)の働きを高め、他の生薬どうしの薬理作用の衝突を防ぐ調整役としても働きます。生姜(ショウキョウ)は体を温め、健胃作用、嘔吐を鎮める作用があります。甘草(カンゾウ)は健胃、強壮作用があり、各生薬のバランスをとる役目も果たします。さらに当帰(トウキ)が入る事によって血の働きをも補う事が出来、補中益気湯の効果の持続性が高まり、体質改善にもつながります。

補中益気湯の効能・効果

補中益気湯の保険適応、効能、効果はツムラによると以下となっています。
 『消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
   夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰委、半身不随、多汗症』

補中益気湯とは、その名の如く、中(お腹=胃腸機能全般)を補い気(生命エネルギー)を益する(増強する)薬です。東洋医学では、人は摂取した食物から後天の気という生命エネルギーを取り出して生きていると考えます。そのため、脾胃が低下する(胃腸の機能が悪くなる)と、生命エネルギーである“気”の取り込みが悪くなり体の中の、“気”の低下が起こります。“気”が低下すると元気がない状態になり、常に疲れや気力の低下を自覚する様になります。補中益気湯は脾胃の働きを良くして、“気”の取り込み量を増やす、また体の中で“気”の循環を良くする事によって、慢性的な疲れや気力低下を改善していく効果があります。

 補中益気湯の具体的な使用目標について、江戸時代の漢方医、津田玄仙(1737-1809)が『療治茶談』の中で、次の八項目にまとめています。これがとても判りやすく、現代でも通用する記述であるので以下に示します。

臍にあたって動悸:東洋医学的診察である腹診の所見です。医師が判断します。
脈散大で力なし:東洋医学的診察である脈診の所見です。医師が判断します。
 この様な体質の人で何となく気力が出ない、だるい、精神的に落ち込むなどの症状がある人の症状改善に最適です。

 また、長引く感冒(風邪)の治療にも有効です。具体的には、感冒の発熱や咽頭痛は治ったが、熱感とだるさ、軽微な咳が続くが内科的には異常が認められないといった状態などに補中益気湯を使うととても効果的です。補中益気湯については、慢性的な疲れ・長引くダルさのための漢方外来ページもご覧下さい。

 変わったところでは、上記の適応症にもある多汗症の治療にも使われます。

慢性疲労症候群(CFS)にも補中益気湯はとても有効です。肝機能障害、腎機能障害、慢性に経過する感染症などを血液検査で除外した後、補中益気湯を内服します。症状によっては、108番・人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)48番・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)137番・清暑益気湯(セイショエッキトウ)などの漢方薬を使う事もあります。
 慢性疾患の補助治療薬としても補中益気湯は有効です。上記適応症に、病後の体力回復、結核症とありますが、それ以外でも悪性腫瘍の治療時にも補中益気湯は使われます。特に悪性腫瘍に対して、化学療法や放射線治療を行う場合に体力の維持や副作用の軽減といった目的でしばしば使用します。補中益気湯単独でも十分な効果が期待できますが、煎じ薬になりますが、補中益気湯に紫根(シコン)という生薬を加えた漢方薬はより効果が高まります。

 補中益気湯は体質に合っていれば、早い人で数日、遅い人でも1ヶ月以内に効果があらわれます。しかし、補中益気湯の体質改善効果を期待するためには6ヶ月以上内服する事が望ましいと考えます。補中益気湯については、慢性的な疲れ・長引くダルさのための漢方外来ページもご覧下さい。