漢方の話 はじめに・その3 (即効性について)


「漢方の話・はじめに」の続きです。

外来で漢方を処方する際によく患者さんから聞かれる事を書きます。
先ず

漢方薬って即効性がありますか?

という質問です。
感冒に対して漢方薬を処方する時などによく聞かれます。
答えは

西洋薬と同様に薬によって異なります。

です。
西洋薬、漢方薬を問わず、風邪薬は早く効かないと意味がないですし、高血圧や脂質異常症の薬は長く飲んで効果を発揮するものです。

風邪に対して漢方薬を処方する場合、私が漢方薬に期待するのは先ずは

「即効性」

です。

漢方薬に即効性というのは意外に思うかも知れませんが、実際に自分自身が風邪に罹った時などは、漢方薬を使ってあわよくば翌朝までに治す事を目指します。漢方治療を知る前までは考えもしなかった事です。
我々が普段目にする風邪薬は、薬局の棚に並ぶ市販薬にせよ医師の処方する西洋薬にせよ、熱・頭痛・咳・鼻水などの症状を対症療法的に抑える事を目的にして作られているため、症状がある程度進んでからしか効きません。
せっかく風邪のひき始めに内服しても、ある程度風邪が悪化するまで十分効力を発揮出来ないのです。
その点漢方薬の風邪薬は、体自体を活性化する事によって風邪を治そうとします。
そのため風邪の症状が十分に発現する前から効果を発揮してくれるのです。

これだけで、本格的な症状が出る前に治ってしまう風邪もあります。
相撲で言えば土俵に上がる前にやっつけちゃう様な感じですね。もしも一晩経って風邪が悪化していた場合は、その時点から漢方薬に加えて抗生剤や消炎鎮痛剤などを投与しても十分間に合います。

筋肉痛の治療

こちらについても同様の事が言えます。近年近郊の山々の登山がブームです。東京都八王子市にある高尾山などは休日ケーブルカーが一時間待ちになるなど元気なお年寄りによりちょっとしたディズニーランド状態になっています。
そのお年寄りの方々が登山の際に携行しているのが

68番の「芍薬甘草湯」

登山の途中で脚が攣った時の特効薬です。

西洋薬の消炎鎮痛薬は飲み薬にせよ湿布薬にせよ十分に効果が発揮されるまで30分位かかります。そのためふくらはぎが攣った時などは、5分以内の休憩では改善しません。薬の効き目が発揮されるまで長時間休憩するか、多量の消炎鎮痛剤で痛みだけを無理やり抑えて強行軍で歩き続けるかしかありません。

それに対して「芍薬甘草湯」は内服後数分で効果があります。登山の途中でもパーティの他のメンバーに給水休憩を兼ねて5分程待っていてもらう間に「芍薬甘草湯」を内服しポカリスエットなどで電解質を補充すれば、かなりの確率でパーティに復帰して登山を続ける事が可能です。

漢方薬を食間(食事の30分前が目安)に内服してもらうのは次の理由によります。

漢方薬は生薬のため、腸内細菌の働きなどを含む消化器系の力を借りて薬が活性化された後に体内に吸収され、薬理効果が発現します。そのため食間などの消化器系が暇な時に服用すると薬効が多少アップします。しかし、食間服用にこだわるあまり、漢方の服用自体を忘れてしまっては元も子もありません。また前述の芍薬甘草湯など、対症療法として使用する漢方治療の場合は食事と関係なく症状がある時に服用すべきですし、意図的に食後に服用を指示する場合もあります。漢方薬を食間に飲み忘れた場合は、食後でも構いませんので思い出した時に内服してください。

「漢方薬は何種類まで一緒に飲んで大丈夫ですか?」

という質問も良く聞かれます。
漢方薬は生薬で構成されているため大きな副作用は少ないのですが、薬である以上は適切な内服量というものは存在します。漢方薬の組み合わせによっては、例え2種類であっても生薬の量が許容範囲を超えてしまうなどが考えられますが、その辺は漢方薬に精通した医師であれば計算して処方しますので大丈夫。飲む側の患者さんが心配する必要はありません。
しかし、生薬の量が許容範囲内であったとしても漢方はあまり多くの種類を飲むと、薬同士の特徴を打ち消しあってしまう可能性があるため、同時には2種類、一日でも3種類までの内服が目安となります。
例えば、更年期障害で漢方薬を長期間飲んでいて、風邪をひいて漢方薬が2種類処方されたとします。その場合、漢方治療の原則は、風邪などの急性症状に対する漢方薬の内服を優先し、その間更年期障害の漢方の内服は中断します。構成生薬の過量さえ無ければ更年期障害の漢方も併用しても副作用的な問題は無いのですが、効果が鈍ってしまうのです。更年期障害などで処方される長く飲んで体調を整える漢方薬は風邪の漢方を飲んでいる間の休薬は問題になりません。

当、代官山パークサイドクリニックでは、ツムラ、クラシエ、オースギ、コタローなど、保険適応の漢方薬による治療を行っております。飲みやすい顆粒の漢方薬に加え、錠剤やカプセルでもご用意できる漢方薬もあります。どうぞお気軽にご相談ください。