花粉症の話2012⑧ 咳(喘息様の長引く咳)


花粉症の範疇に入れるべきか議論はあるところですが、スギなどの花粉をアレルゲンとして喘息、もしくはアレルギー性気管支炎を発症する事はしばしばあります。
 症状が高度である場合は喘息のガイドラインに沿った治療を受ける必要があります。ここでは軽症の場合に限って治療方針を説明したいと思います。

長引く咳

喘息様の咳、もしくは2~3週間以上続く咳がある場合、先ずは血液検査で病状を把握する事が重要と考えます。
血液検査では炎症反応、好酸球数、IgE値などを検査します。状況によってはアレルゲン検査を行うとより診断精度が高まります。これも血液検査で調べる事が可能です。

 そのうえで治療方針を決めます。以下に軽症の場合の治療を示します。

 逆から見た統計データもあります。
すでに気管支喘息と診断されている人のうちアレルギー性鼻炎を合併している率は60.8%、花粉症などアレルギー性鼻炎が悪化した時に喘息症状も悪化する率は52.3%に及びます。喘息を持っている人にとってアレルギー性鼻炎の悪化する花粉症時期は最大級の増悪因子となり得ます。十分な注意と対策、治療が重要です。

オービクル

スギ花粉が喘息様の症状を引き起こす原因についても様々な事が判ってきています。従来は『スギ花粉の大きさは30~40μであるためスギ花粉を吸入しても鼻粘膜に留まり、それより末梢の下気道には影響しない。』と言われてきました。しかし近年では、スギ花粉表面から“オービクル”とよばれる微粒子が剥がれ、気管支などの下気道に侵入する事が知られています。このオービクルは径2μ程度と小さく、気管支にまで入り込みます。オービクルは単体でもスギ花粉と同等の強い抗原性を持つため、喘息症状を引き起こすとの事です。

≪漢方薬による喘息様の咳に対する治療≫

喘息に対する漢方薬は、症状の詳細、罹病期間、身体状況により調整が必要であるためこまめに診察を行い決定する必要があります。

 熱証タイプ※1の人の基本処方は55番・麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)です。定期的に内服する事で咳の頻度を大幅に減らす事が可能です。また即効性もあるため、咳の発作が起きた時には頓服として内服する事も可能です。状況に応じて『越婢加半夏湯(エッピカハンゲトウ)』や95番・五虎湯(ゴコトウ)を使う事もあります。
 寒証タイプ※1の人の基本処方は19番・小青竜湯(ショウセイリュウトウ)です。寒証でなおかつ虚の要素が強い人は『桂姜棗草黄辛附湯(ケイキョウソウソウオウシンブトウ)』を使いますが、エキス剤には存在しないため45番・荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)127番・麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)の合剤で代用しています。
 急性期には55番・麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)19番・小青竜湯の合剤を処方する事もありますが、これも良く効きます。
 麻黄を含まない漢方薬を出す場合は119番・苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)66番・酸棗仁湯(サンソウニントウ)を使います。
 その他、気道粘膜の乾燥があれば29番・麦門冬湯(バクモントウ)。喉のつかえ感があれば16番・半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)96番・柴朴湯(サイボクトウ)。イライラ・ゆううつ感など『肝気鬱結(カンキウッケツ)』の症状を伴う場合は85番・神秘湯(シンピトウ)。心臓喘息の要素がある場合は36番・排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)。粘調な痰が多量に出る場合は90番・清肺湯(セイハイトウ)などを使う事もあります。

※1体質【証】
熱証(ネッショウ) – 顔色が赤く興奮的で熱状を帯びる人
寒証(カンショウ) – 顔色が蒼白く沈衰的で手足の冷える様なタイプ

 通常の漢方薬の処方は自覚症状の改善を指標にしますが、喘息に対する漢方薬の処方は自覚症状の改善と同じくらい診察所見の改善を重要視します。状況によっては自覚症状が改善しても処方を変更することもあります。上記は一応の目安と考えてください。

このように喘息様の長引く咳に関しては特に、その症状・罹病期間・体調、またその人の体質【証】により、治療方針は変わってきます。
 また、咳だけでなく、鼻や目など他のアレルギー症状も併発しているケースも多いため、複合的に診断していく必要があります。お早めに医療機関に観て頂くことをお勧め致します。
※ 鼻や目など、その他の花粉症症状に関しては下記関連コラムをご覧ください。