花粉症の話2012 ノイロトロピン注射


花粉症では一本注射をすれば一か月間効果が持続するデポステロイドの注射が有名ですが、体への負担が大きいためお勧めできません。

 当クリニックでは、体の負担がほとんど無い『ノイロトロピン注射』を花粉症治療としてお勧めしています。

ノイロトロピン注射とは

 ノイロトロピン注射は、化学合成によらずに作り上げられた注射液であり非常にナチュラルなものです。飲み薬でいうとさしずめ漢方薬といったところでしょうか。体に大きな負担をかける事が無く、依存性もありません。

 ノイロトロピン注射は、ワクシニアウィルスという安全なウィルスを家兎(ウサギ)の皮膚に注射し、炎症を生じた皮膚組織から抽出分離した非タンパク性の活性物質を含有する注射液です。この抽出物質は下行性疼痛抑制系という神経機構を活性化する事によって疼痛を軽減する事が知られています。その特性を生かして、慢性的に経過する腰痛や肩・首のこり、痛みによく使用されます。

 ノイロトロピンはいわゆる“痛み止め”とは異なります。消炎鎮痛剤などの“痛み止め”は長期投与を行うと疼痛部位の血流低下などをひきおこし、治癒を遅らせるという負の側面を併せ持っています。例えば、怪我をした人が『早く良くなりたくて痛み止めをたくさん飲んでいる』と言ったとしたらどうでしょうか?その人が友人であれば止めるように忠告するのではないでしょうか。痛み止めは、その時点では痛みを軽減させますが、その効果は限定的であり、長期的には治癒を遅らせます。その点ノイロトロピンは神経系にのみ作用するため長期連用しても消炎鎮痛剤に見られるような副作用はありません。むしろ疼痛の閾値を下げる事によって痛みの程度もしくは頻度を減らしてくれる可能性があります。

効果

 ノイロトロピン注射は花粉症の諸症状に対しても極めて有効です。ノイロトロピンがなぜ花粉症に効くのかは判明していない部分が多い(疼痛の下行抑制系に作用するのと同様、神経機構に働きかけるのではないかと考えますが・・・)のですが、長期連用でも副作用がほとんど無いという点は痛みに対する投与と共通しています。また、幅広い症状に効果があるのも特徴です。花粉症によるくしゃみや鼻水、鼻の違和感、眼球のかゆみなどの主要症状に幅広い症状に効果があります。

 また、ノイロトロピン注射は花粉症による目の周りなど全身の皮膚のかゆみにも効果的です。皮膚のかゆみは、花粉症などのアレルギーによるものだけではなく、湿疹・蕁麻疹をはじめとする各種の皮膚疾患によるかゆみにも効果があるため、原因が判らない皮膚のかゆみにも安心して使えます。

メリット

 ノイロトロピン注射は様々な薬との併用に問題がないという点も大きな利点です。各種の消炎鎮痛剤や抗アレルギー剤などの花粉症の薬、ビタミン剤などの注射薬と併用しても、効果を打ち消しあう事もありませんし、予期しない副作用が出現する事などもほとんどありません。また、ノイロトロピン注射は化学合成されていないため、注射液の性状が比較的体液に近いという性質もあります。そのためノイロトロピン注射は刺激が少なく、注射時にあまり痛くないというのも大きなメリットです。

欠点

 良い事ずくめのノイロトロピン注射ですが、欠点もあります。先ずは作用に差があるという事です。抗ヒスタミン剤の内服薬などと比べて、効く人と効かない人という様に個体差がある、また同じ患者さんでも効く時と効かない時があるという様に効果の発現に差がある印象があります。そのため花粉症に対する治療としては、補助療法という位置づけにとどまる事が多いと思われます。つまり、副作用が少ないとても良い治療法ではありますが、ノイロトロピン注射単独での治療は困難という事です。

ノイロトロピン+漢方薬

 ノイロトロピン注射を併用療法で使う場合は、漢方薬との組み合わせが最も相乗効果が期待できるためお勧めです。それでも効果が不十分な場合は抗ヒスタミン薬投与とします。結果的に抗ヒスタミン薬の内服となった場合でも、ノイロトロピン注射を併用する事によって薬の内服量や投与期間を短くする事や、より軽めの抗ヒスタミン剤の内服とする事が出来るなどの効果が期待できます。

どうしても注射ができない(通院困難、注射が苦手などによる)場合は、ノイロトロピンの内服薬もあります。しかし、ノイロトロピン注射に比べて内服薬は効果が限定される印象があります。特に花粉症の治療に関しては内服薬ではほとんど効果が見込めないのが実情です。(私も慢性的な疼痛の治療にはノイロトロピンの内服薬を使うケースはあります。) 可能ならばノイロトロピンは注射で行う事をお勧めします。